最高裁判所第二小法廷 昭和40年(行ツ)53号 判決 1967年8月25日
上告人 利岡静栄
被上告人 鹿児島地方法務局登記官
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人利岡晴樹の上告理由について。
論旨は、本件登記申請を不適法であるとした原審の判断が、共有物分割の法理及び不動産登記法の解釈、適用を誤り、ひいては、事実誤認、理由不備、理由齟齬の違法をおかしたものである、という。
しかし、共有物の分割は、共有者相互間において、共有物の各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行なわれることであつて(民法二四九条、二六一条参照)、所属のごとく、各共有者がその取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではない。したがつて、一箇の不動産が数人の共有に属し分割の結果各人がその一部ずつについて単独所有者となる場合には、まず分筆の登記手続をしたうえで、権利の一部移転の登記手続をなすべきである。また、所属裁判上の和解は、共有物の現物分割を内容とするものであつて、分割の協議に代わるべき各共有者の意思の陳述を擬制するものでないこと、その主張に徴して明らかである。それ故、共有物分割を登記原因とする持分移転登記を登記義務者たる他の共有者と共同して申請することなく、裁判上の和解自体を登記原因として上告人単独でなした本件所有権取得登記申請は不適法というのほかはないのである。所論引用の大審院判決は、いずれも、事案を異にする本件に適切でない。
されば、叙上と同趣旨に出た原審の判断は、正当であつて所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に基づくものであり、採用の限りでない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判官 奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)
上告理由書<省略>